フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
何度となく嫌がらせが続いて職場や警察に相談した直後にそれは起こった。

残業して帰宅するとマンションのエントランスの前に傘を持って立っているその人を見た。

その姿に気が付いた私が恐怖を感じて身を翻してその場から逃げようとしたら、その人は怒った顔をして追いかけてきてすぐに私の手をつかんだ。

「どうして逃げるんだ。俺たちは遠い昔から結ばれる運命のはず。逃がさない」

そう言って私の腰に手をまわそうとした。

「いやっ、やめて」

もがいているうちに私のパンプスの先がその人の脛に当たり「うっ」と言って、私をつかむ力が緩んだ。

その隙に逃げようと身体をよじった瞬間、私の右の大腿に強い衝撃と痛みが走った。

私の大腿に彼の持っていた傘が刺さっていた。

どんな声だったのかよくわからないけれど私は悲鳴を上げた。

たまたま同じマンションの住民の若い男性と近くに住む年配の男性が通りがかり、1人が救急車を呼び。もう1人が私を刺した人を取り押さえてくれた。

その人は警察に引き渡され、私は自分の病院で治療を受けてこの件は終了するはずだった。

でも、
あのストーカーは逮捕拘留されているはずなのに、私の盗撮写真が相変わらず郵便受けに入っていたのだ。
部屋のドアにはセクシーな下着が入った袋がかけられている。

さすがに我慢できず兄の圭介に連絡をした。

圭介はすぐに来てくれた。
警察、弁護士、興信所などに手をまわしてくれた結果、私にストーカー行為をしていたのは私を刺した人一人ではなかったことが分かった。

郵便受けに私の盗撮写真を入れていたのは、事件の時に私を助けてくれた同じマンションの住民の男性だった。
あの時も私を駅からつけていてあの事件に遭遇したのだという。

刺された事件後、そんなことを知らない私は友人に付き添ってもらい命の恩人としてお礼を言いに会いに行っていた。
しかも、その人は私の友人と意気投合したふりをして彼女と連絡先を交換していて、その後友人を交えて一緒に食事に行っったこともあった。

同じマンションなのだから困ったことがあったら助けますと言われてうれしかった。その人が実はストーカーだとは知らず。
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