フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
「あ、そうだ。ステープラの針が欲しかったんですけど、少し分けていただけますか?」
「少しと言わずたくさんお持ち下さい」
と冗談交じりで大きな箱ごと渡そうとするから
「お気持ちだけ」と中の小箱を1つ頂いた。それでも1000本入ってますしね.
うふふと笑うと若くて可愛らしい女子社員が
「本当にお綺麗ですね」
と顔を赤らめた。
「そ、そんなことありませんよっ。皆さんの方が素敵です!じゃ、ありがとうございましたっ!」
私は恥ずかしくなってペコリと頭を下げて慌てて秘書室を出た。
ドアを出たところで、秘書室長さんと私を敵視しているらしいあの秘書さんと出会った。
「ノエルさん、どうかしましたか?」
秘書室長の山下さんは50代の男性だ。秘書室から私が出できて驚いたらしい。
「いえ、ステープラの針を分けていただいただけですから、大丈夫です。失礼しますね」
とそそくさと専務室に戻った。
だって、室長さんと一緒にいた秘書さんの視線が怖すぎる。
彼女は確か、初日に修一郎さんの膝に座ってしまったところを目撃されてしまった秘書さんだ。
あの視線、ホントに怖い・・・。
お昼休みはお父さまに誘われていて、湯豆腐が有名な料亭でごちそうになってしまった。
午後の休憩は社長室に来るように言われていて、修一郎さんの出張中には専務室から出ませんと言った割には、秘書室に行ったり社長室に行ったりしている。
まぁ、お手洗いにだって行くのだから、ずっと専務室にいられるわけではない。
社長室で常務からの差し入れというおやつを貰ってお茶を飲んだ後、専務室に戻ろうと廊下を歩いていると、前方にふらふらしながらお手洗いに入っていく女子社員を見かけた。
気になってお手洗いに入ると、彼女は洗面台に手をついて座り込んでいる。
ひどく顔色が悪い。
「どうしました?」
声をかけるけど、こちらを見る力も無いらしい。
「生理痛がひどくて」
ああ、そうか。女子は大変だよね。
「何か薬は飲んだの?」
「さっき飲んだんですけど効いてこなくて」
「そう。じゃあ、少し横になった方がいいわ。歩ける?もうお手洗いは大丈夫?」
「あ、ハイ…」
私が身体を支えて立ち上がらせると、女性は私の顔を見てぎょっとした。
「専務のっ!」
慌てて、私から逃げようと身体を退こうとするから、その身体をがっちりとしっかりつかんだ。
「ちょっと待った!ほら、顔色悪いし、このままだと倒れちゃうわよ。黙って私に付いてきてちょうだい。えーっと確か常務の秘書さんでしょ?」