フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
彼女は気まずそうに頷いて私に肩を抱かれてお手洗いを出て専務室に行く。

ソファーに座らせてハイヒールを脱いで横になるように指示した。

「ここで少し休むといいわ。今日はもう誰も来ないし」

私のひざ掛けを渡して、腰に当てるように使い捨てカイロを持たせる。

彼女に時間は大丈夫かと確認すると、常務は会議に出席していて2時間程戻らないらしい。
遠慮する彼女を押しとどめて、温かい紅茶を淹れ社長にもらったばかりのマカロンを食べるようにすすめてソファーで休ませた。
痛みに対抗するには体を温めて甘いものを食べるのもいい。

内線で秘書室長に常務の秘書さんを専務室で休ませる許可を取った。
これで彼女は気兼ねなく休憩が取れる。

下腹部痛、頭痛、腰痛がかなりひどかったらしい。
本当に女子は大変だ。

彼女は1時間ほど休むと顔色はかなり良くなっていた。



修一郎さんが出張に出かけて3日目。

私はいつも通り仕事をしていた。
修一郎さんは今夜出張先から直接マンションに帰宅する。夜になれば会えるから、もう少しのガマン。

そう、私は修一郎さんに会えなくてかなり淋しいのだ。

出張初日の夜、愛理さんと夕食を一緒にした後、初めて修一郎さんがいない夜を過ごした。
それまでも帰宅が遅い日はあったけれど、帰宅しなかった事はない。
朝起きて、修一郎さんがいない。

自分でも驚くほど淋しさを感じた。
もちろん、メールも電話もたくさんしてくれる。でも・・・。

一人暮らしの経験が無いわけではないし、ケイと暮らしていた時でさえ感じたことのない感覚だった。

私はこの短期間でどこまで修一郎さんを頼ってしまっているのだろう。

専務室の大きな窓から外を眺める。
今日は天気が悪い。夕方からは東京でも雨風がひどくなるらしい。四国に出張している修一郎さんの帰りは大丈夫だろうか。
帰宅が明日にずれ込むと今夜も1人で過ごさないといけないのか。
でも、無理して帰って来てもらったら危ないし。
はぁっとため息がでた。

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