フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
気分転換に自動販売機の飲み物を買いに行くことにした。

自動販売機が置いてあるのは社長室や専務室があるフロアでも1番奥の来客の目につかない場所。
違うフロアに行くわけではないから大丈夫だと思う。

小銭を握って廊下を歩いていると秘書室の前であの視線の強い秘書さんとすれ違った。

軽く会釈をするがあちらは無視だ。

まぁ、いい。
冷たい扱いをされるのは想定内だし。

ジュースを買って専務室に戻ろうとした時、いきなり後ろから誰かにどすんっと突き飛ばされた。

きゃあっ
小さく悲鳴を上げて倒れ込んだ。

突き飛ばされた先はどこかの部屋らしい。

いてて。
肘をどこかにぶつけたみたいだ。擦りむいているのかも。

この部屋には窓がないのか真っ暗だ。

部屋の中には私以外の人けがないことにホッとする。私には誰か人がいた方が怖い。

暗闇に目が慣れると、入って来ただろう方向が少し明るい。
どうやらここは物品庫か。スチール製の戸棚が並んでいるようだ。

さて、どうしよう。

ここで大声を出して助けを求めるのがいいのか。

いや、スマホで秘書室長に助けを求めるのが最良だと思い、ポケットを探ると入れていたはずのスマホがない。
転んだ拍子に飛び出してしまったようだ。

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