恋愛ノスタルジー
「あの、画がメチャクチャに」

私のこの言葉で我に返ったのか、彼はムッとして口を開いた。

「アンタ、駄作だのメチャクチャだの無礼なヤツだな」

切れ長の眼に不満そうな光をたたえ、彼は続ける。

「これはなぁ、駄作でもメチャクチャにしてるわけでもねぇんだよ。雨で描いてんの」

「…雨で?」

……なんと言えばいいのやら。

「そう……ですか……雨で……なるほど……」

さすが……芸術は奥が深い。

私にはまるで理解できないけど……。

となると、私の行動は彼の邪魔をしているに他ないって事で……。

「……ごめんなさい。邪魔をしてしまって」

「悪いと思うなら、運ぶの手伝ってくれ」

言うなり彼は濡れに濡れたカンヴァスを持ち上げて、斜めに私を見下ろした。

「は、い……」

「イーゼルの下のシートを畳んでこの袋に入れてくれ。絵の具、土の上に流すなよ」

俯くと、カンヴァスから滴り落ちた絵の具がイーゼルの下に敷かれたシートに溜まっていた。

もしかして、公園の土を汚さない為に?

「早くしろ」

「は、はい!」
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