恋愛ノスタルジー
少し考えてから、私は納得すると取り敢えず返事をした。

……そうか、圭吾さんは昨日の電話の相手……花怜さんと恋人同士なんだ。

……だからこんな事を言ったんだと思うと圭吾さんも気の毒に思えてきた。

だって圭吾さんだって、本当は花怜さんと結婚したかったはずだ。

「分かりました。お互いにそうしましょう」

私がそう言葉を返すと、圭吾さんの動作が止まった。

あれ?

……しまった。また何か気に障る事を言ってしまったのかも知れない。

「あの、頑張ってください!花怜さんとのこと」

焦って口から出てしまったこの言葉に、圭吾さんは更にポカンとした。

「あ、ごめんなさいっ。盗み聞きするつもりはなかったんですが、その」

「行ってくる。送らなくていい。遅れる」

……結局、我に返った圭吾さんは冷たい無表情のまま、出社してしまった。


……恋愛は自由にすればいい……。


圭吾さんのこの言葉が、私の抱いていた結婚に対する憧れを完全に打ち砕いた。

それなのに……ホッとする。

私はそんな自分の心に戸惑いながら、一日を過ごした。
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