恋愛ノスタルジー
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「ダメだよ彩。お前と圭吾君との結婚には様々な企業の将来が絡んでいるんだよ、分かっているだろう?」

意を決して最上階にある父の部屋へ出向いた私に、彼は首を横に振ってこう答えた。

「でもお父さん……圭吾さんも私も、お互いを愛していないの。だからその、結婚はちょっと……」

私がこう言うと、父は諭すように続けた。

「愛なんて今は無くても後から付いてくればそれでいいんだよ。それよりもふたりの結婚が担っているわが社の経済を説明すると……といっても時間の関係上ほんの一部分しか話せないが……夢川貿易がアフリカで政府と共同開発中の米の栽培だが、あれはわが社が百パーセント出資している。干ばつ地域でも生産を安定させるための水の供給設備の技術開発の費用を含めてね」

「はあ……」

まるで早口言葉のような父の言葉に何も言い返せず、私は峯岸グループの本社にある社長室で棒のように突っ立っていた。

そんな私に彼は涼しい顔で続ける。

「それに換金作物のゴムの木の農地拡大費用。雇用に伴う福利厚生費用。莫大な出資に加え、技術開発については峯岸グループの傘下である有名企業が名を連ね、契約は最短で最低十年だ。逆にわが社の世界各国にある飲食店に関して言うなら、夢川貿易の協力で新鮮な食材を瞬時に供給出来るようになった。 夢川貿易の輸送ルート多く、世界一迅速だ。それに水産物調達ネットワークは五十か国以上に広がっていて各国の空港に低温コンテナを大量に設置している唯一の日本企業は夢川貿易だけなんだよ。これらが意味している事が分かるだろ?つまりね、彩。お前の結婚でわが社と夢川貿易だけでなく世界経済が変わるんだ」
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