恋愛ノスタルジー
「……はあ……」

……半分以上理解できなかった。

私と圭吾さんの結婚を視野に入れた契約とか、動くお金とか開発中の案件とか、正直私にはまるで分からないからなにも答えられない。

「先代の社長に《開発、研究段階からの輸出入》を強く勧めたのは圭吾君なんだよ。凄いところに目をつける男だよ、彼は。当事まだ若干二十歳の若者だったとは思えないよ」

……そんなに凄い人なんだ、圭吾さんって……。

父は更に続けた。

「お前と圭吾君の結婚で、わが社と夢川貿易との揺るぎない強い結び付きを他社にアピールするのはとても重要な事なんだよ」

…………。

「それに彩。結婚に関しては昔からパパと約束していただろう?」

「……はい……」

そこでタイムアップだった。

「社長お時間です。銀座でジョシュ・イェーガー様との会食です」

…… ジョシュ・イェーガーさんって確か、世界的に有名なリゾートホテルのCEO……。

「わかった」

第一秘書の柳瀬さんに促され、父が小さく頷いた。

「マリッジブルーとかいうやつだな。絶対そうだ、そうに違いない。でも心配しなくていい。圭吾君は実にいい青年だ。きっとお前を幸せにしてくれるよ」

「……はあ」

峯岸グループの社長である父のスケジュールは常に分刻みだ。

これ以上私に裂く時間も私の意見を聞く気も、彼には無さそうだった。

*****

その夜、圭吾さんが帰宅して早々私を見下ろして言い放った。

「余計なことを言わないでもらいたい。僕の……夢川貿易の信用に関わるじゃないか」

すぐに父が圭吾さんに何か言ったのだと思った。

「親が決めた結婚とはいえ、最終的に決断したのは僕だ。余計なことを考えて波風をたてないでくれ」

「ごめんなさい……」
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