恋愛ノスタルジー
私の小さな謝罪では圭吾さんの苛立ちは収まらなかったらしく、

「恋愛は自由にやればいいと言っただろう?そういう事で僕は君を縛る気なんか更々ないんだ。巷では不倫は罪だと言うが夫となる僕が許すんだから、君は堂々と楽しんだらいい。だから結婚はする。これ以上無駄な抵抗はやめてもらいたい」

圧倒的な弁論に異議を唱える事なんて出来ない。

「……はい、分かりました」

「……」

「……」

直後に微妙な沈黙が流れる。

まだなにか言いたいのか、圭吾さんは不機嫌そうなまま私を見据えている。

……やだなー……。

あ、そうだ。圭吾さん、夕食は食べたのかな。

「あの……今日は凄く早いお帰りですね。今から夕飯の仕度をしますからシャワーでも」

「いい。会議が長引いてランチが遅かったんだ。僕は適当に済ますから君だけ食べればいい」

ツーン!と私から顔を背けた圭吾さんを見ていると、なんだか自分の分だけ作って食べる気にならない。

……またやってしまった。

今日は外で食べよう。

私は一人きりになった広いリビングでそう思うと、短い書き置きを残して玄関へ向かった。

****


週末ということもあり、街は普段よりも賑わっていた。

ただでさえこの辺りは有名繁華街が近く、人通りが多い。

信号が赤になってしまった交差点でふと道行く人々を眺めると、一組のカップルに眼がいく。
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