恋愛ノスタルジー
ちょうどジュエリーショップから出てきた恋人達の幸せそうな姿。

女性が男性を見上げて何か言うと、男性が輝くような笑顔で言葉を返した。

それから彼女の手を握った彼は、前を向いて歩き始めた。

そこで二人の姿は見えなくなってしまったのに、私は彼らの消えた角を見つめずにはいられなかった。

だって……羨ましかったから。

私にはない幸せを、少しでも長く見ていたかった。

そんな私の脳裏に、自然に榊さんの顔が浮かんだ。

……会いたい。

確か、あの画廊の主人は『展示期間はまだ五日ある』って……。

行ってみよう。だって会えるかも知れないもの。

***

駅に入って二番ホームに向かうと、私は間もなくやって来た電車に乗り込んだ。

十分足らずであの画廊の最寄り駅に到着すると、次第に胸がドキドキと煩く騒ぎだす。

もし会えたら何て言おう?『先日はお邪魔をしてしまってごめんなさい』とか?

相変わらず月並みな台詞しか思い浮かばなかったけど、まずはお詫びしなきゃダメでしょ?

それから?その後は?

色々と考えている間に、画廊の入り口まで来てしまった私は、胸に手を当ててドキドキを沈めようとした。

眼を閉じて深呼吸。
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