恋愛ノスタルジー
「俺、会社経営してるんだ。画を描くのは夜、もしくは休日の昼間だからもし俺のアシスタントをするとなると帰るのが遅くなる」

「構いません!」

「あっははははっ!」

アキさんが我慢できないといったように吹き出して、榊さんはポカンと私を見つめた。

「……お前……本当に大丈夫かよ。出逢って間なしの男のアシスタントとかヤバイと思わないわけ?」

だめ。ここで負けたら私のこの運命の恋が粉々になってしまう。

「丸っきり思いません。それに私は決して邪な考えで榊さんのアシスタントをしたいわけじゃありません。榊さんについて純粋に芸術のお手伝いをする事以外考えていません」

……思いきり嘘だけど。

「じゃあさ、もし俺が悪いヤツだったらどーすんの?」

「え?」

榊さんは少し眉をあげて私を覗き込んだ。

「もし俺がさ、悪い男だったらどうすんの」

「そんなわけないです。絶対ない。あんな柔らかい風や暖かくて優しい日の光を描く人が悪い人のわけがありません」

だって、感じたもの。この画の作者はきっと心が温かいって。

「それに知りたいんです。反対側にあった画……画の中の女性がどうしてあんなに安堵して微笑んでいたのか」

そうだ、知りたい。

私はなにもかも知りたい、この人の事を。

ふと我に返って目の前に腰かけているアキさんと榊さんを見ると、今度は二人ともが呆気に取られて私を見ていた。
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