恋愛ノスタルジー
だから私は、

「そ、それに榊さん言いましたよね?!私が風邪を引いたらお詫びに何でも一つお願いを聞いてくれるって」

「さっきお前、平気ですって言ったじゃねーか」

が、頑張れ!頑張れ私!!

「今は平気ですけど、実はあの日の夜、熱が出たんです」

よくもまあ、次から次へと嘘をつけるもんだ。自分でもビックリだ。

恋って凄い。

その時、

「凌央、雇ってあげたら?アシスタント欲しいって言ってただろ?」

「アキ!」

余計なことを言うなといったように榊さんがアキさんをたしなめる。

「お願いします!お、お金は要りませんから!」

「ほら。彩ちゃん真面目そうだし」

アキさんから思わぬ加勢を借りた私は、深く頭を下げてギュッと眼を閉じた。

「……」

長い長い沈黙が怖い。

その時、カチャリとカップの音がした。

それから大きな溜め息の後、

「分かった分かった!雇う雇う!まあ三ヶ月なんてアッと言う間だしな。まあいいや!」

……やった。やった、私……!

「ありがとうございますっ!頑張ります、私」

この時の榊凌央さんの困ったような笑顔と投げやりな口調を、私は一生忘れないだろう。
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