恋愛ノスタルジー
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榊さんのお家にお邪魔してすぐ、早くも私の嘘は綻び始めた。

「あのさ、家事や画のアシスタントしてくれるんだよな」

「はいっ!」

元気よく返事をした私に、榊凌央さんは少し驚いたように眼を丸くした。

「昼間は働いてるんだよな?会社どこ?」

「か、いしゃ……ですか」

「……うん、会社。どこ?」

ど、どうしよう……峯岸グループの本社でウェブデザイン課だなんて、口が裂けても言えない。

言えば名字から、私が峯岸グループの人間だとバレてしまうも知れない。

ど、どうしよう……。

「会社は……丸ノ内にある企業でして、ウェブデザインの仕事をしています」

「……ウェブデザインやってて、三ヶ月後には海外転勤?」

ヤバイ。計画性のない嘘って、つじつまが合わなくなるのよね。

「えーっと、実は……三ヶ月後に留学を考えていて……それを言うと榊凌央さんにアシスタントを断られるんじゃないかと思って……ごめんなさい」

榊さんは、しどろもどろの私を諦めたように見て、

「別にもういいけど。三ヶ月間だけだし更新は考えてないから。……それからフルネームじゃなくて凌央でいい」

「凌央……」

信じられない。嬉しい。下の名前で呼んでもいいなんて…!
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