恋愛ノスタルジー
嬉しさのあまりクラッと目眩に襲われた。

「呼び捨てかよ。距離詰めすぎだろ」

「あっ、すみません」

「いやまあいいけどさ」

「ありがとうございます!私の事も彩って呼んでください。しかも呼び捨て希望です」

「は?」

榊さんは私をシゲシゲと見て唇を引き結んだ。

「……怖いから面接していいか?」

ん?怖いから?何が怖いんだろう。

「フルネームは……峯岸彩だよな。歳は?」

「25歳です」

するとホッとしたように凌央さんが息をついた。

「ガキっぽいから不安だったけど……成人済でよかったぜ」

何だか複雑な表情で私を見る凌央さんの質問はしばらく続いたけど、私は雇って貰ったという安堵感に胸が一杯で、終始ニコニコと笑っていた。

****

「榊凌央(さかきりょう)28歳……。職業は画家……だけど本職は画材開発・販売の会社経営……」

リビングのソファで寝転がり天井を見つめていると、何度も頭の中で凌央さんの姿と声が蘇る。

『……アシスタントはまあ置いといて、晩飯とか作ってくれる?外に食べに行くと時間取られるから』

もう、嬉しすぎて死にそうだった。

頑張る。頑張ります私。正直料理は好きじゃないけど。

好き嫌いはないって言ってたから……明日は何にしよう。

主菜はお魚がいいかなあ、それともお肉?

私は凌央さんの為に作るメニューを考えるべく、スマホのクッキングアプリを開いた。
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