恋愛ノスタルジー
整ったカッコいい顔にウンザリ感が溢れ出ている。駄々漏れもいいところだ。

「圭吾さんの為に作ってるんじゃないから安心してください。ただ味見をして助言してもらいたいなあと思っただけなので。でもいいです、ごめんなさい。明日彼に直接感想を聞きます」

だってこの先も何かにつけて誤解されたり不機嫌な顔をされるのは嫌なんだもの。

ただでさえいつも叱られているし、結婚後もこんな調子だと息が詰まる。

だから私は決めたんだ。

もう、圭吾さんに期待しない。

彼の顔色を窺いながら一緒に暮らすのは止める。

あ、それよりもフルーツのワインムースの具合を見なきゃ。

……明日が楽しみだな。

凌央さん、喜んでくれるかな。

私はいつの間にか再び、慣れない料理に没頭していった。

*****


「彩ぁ!カメラマンとの打ち合わせ、午後イチに変更!」

成瀬さんの良く通る声に、私も身が引き締まる。

「了解です!」

峯岸グループのウェブデザイン課というのは、業種ごとに存在している。

例えば同期入社の麻広さんは《食品ウェブデザイン課》で、私はといえば《建築ウェブデザイン課》所属だ。

「あ、それとNロマンティックタウンのウェブ公開用のドローン撮影でアクシデント発生。台風の影響でドローン飛ばせられなくてね、カメラマンから納期遅らせて欲しいってさ」
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