恋愛ノスタルジー
Nロマンティックタウンは、一区画が45坪以上の戸建て住宅地だ。

道幅も広く木々を多く使っていて、緑豊かな美しい新興住宅地だ。

この度は建て売りエリアにドローンを飛ばしその動画をウェブ公開する予定なのだが、撮影日が流れると新たに日程の組み直しになるから、そこのところは仕方がない。

「じゃあ、動画差し込みは後日ですね。今日は打ち合わせ前にカメラマンから送られてきた画像データで何パターンか作っておきます」

「助かる。で、今日はそれが終わった後、夢川貿易行ってきてね」

夢川貿易は言わずと知れた私の婚約者、夢川圭吾さんの会社だ。

私はビクッとして成瀬さんに眉を寄せた。

「どうしてですか?」

そんな私の反応が予想外だったのか、彼女は少しだけ驚いた後、興味深げに私に歩み寄った。

「夢川貿易の北欧輸入雑貨をモデルハウスに使うんだって。AプランからFプランまで全部ね。で、写真映えする雑貨を実際にウェブデザイン課がチョイスする事になったのよ。ネットから見学会参加募集かけて、実際に契約決まると雑貨は契約者にプレゼントするらしいわ。それで……なに、麗しの社長にして婚約者と喧嘩中?」

こ、怖い。

成瀬さんの瞳が、獲物を狩る直前の肉食動物みたいだ。

けど、成瀬さんは私が峯岸グループの人間だと知っても差別しないでちゃんと叱ってくれるし誉めてくれる真っ直ぐな人。

私の中で成瀬さんの信用度は百パーセントだ。

「喧嘩なんてなりませんよ。圭吾さんはいつも、ひとりで怒ってるんです、私に。いつもツーン!ってしてますよ。だから家以外で会いたくないです。それにこれってインテリアコーディネーターの仕事じゃ?」
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