国王陛下の極上ティータイム
「クラリス殿にお伝えしたいことがございます」

「私に、ですか?」

ディオンは「ランティス様直々のお言葉です」と前置きをしてから言った。


「国王陛下が茶を届けてほしいと」


クラリスとブランは顔を見合わせた。


「えっと、どういうことでしょう?」


驚きのあまり、ディオンの言葉の意味をうまく理解できない。

お茶係の自分が、国王陛下のランティスに茶を届けろと、そういうことなのだろうか。冗談ではない。そんな不可能なことができるわけがない。


「驚かれるのも無理はありません。ランティス様のわがままですから」


ディオンは溜め息を吐いた。


「ディオン殿、陛下のお体の様子はどうなのですか?」

ブランが遠慮がちに尋ねると、ディオンはぱっと顔色をかえて「大分良くなってきつつあるようです」と答えた。


「ずっとクラリス殿の名前を呼び続けていらっしゃいます。会いたい、顔が見たい、と」


クラリスは目を見開いた。会いたいと思っていたのは自分だけではなかった。

それどころか、ランティスがそこまで思ってくれているなんて思ってもいなかった。


「あまりにランティス様がクラリス殿のお名前を呼び続けるものですから、薬室長と相談して、茶室からカモミールのハーブティーをお願いしようと」


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