国王陛下の極上ティータイム
固まって声も出せないクラリスの代わりに「カモミールのハーブティー、ですか」とブランは尋ねる。

「よろしいのですか?」

「はい。ハーブティーの効能と薬の成分とを考慮して、問題ないと薬室長が判断されました」

「許可状もここに」とディオンが差し出した紙には、薬室長の字でサインと「許可」の文字が書かれている。


「クラリス殿、会いに行ってください」


ディオンは頼み込むように言った。


「ランティス様もそれを望んでおられます」


クラリスは少しの間許可状に目を落として、それから顔をあげるとディオンを見据えて言った。


「かしこまりました。お持ちいたします」


そう言い終わるとすぐに茶室の方へと走っていく。

ディオンとブランはその後ろ姿を愛おしい目で見つめていた。


「クラリスはいつもとても奥手ですよね」

ブランの言葉にディオンは頷く。

「いつも言動はきっぱりしていらっしゃるのですが、恋となると違うのでしょうか」

「どうやらそのようです」

フォルト国王には物怖じせずに色々と言ってのけたというのに、恋人には恥じらいを感じる。

素っ気ない部下の稀な可愛らしさに、ブランはふっと口元が緩む。

「背中を押してやらないといけません」
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