国王陛下の極上ティータイム
一度決めたら変わらないそのまっすぐさがクラリスの長所だと、いつかコレット侍女長は言ってくれた。

どんなときにも変わらないその強さがクラリスを助けるだろうと。

今この時も助けてくれるかは分からないが、信じてみたい。そうクラリスは思った。


「クラリス殿は、強いな」


ブランは感心したように、目を伏せてそう呟いた。


「サンドリアのエメは難しい。陛下にお出ししても恥ずかしくないくらいになるまでは見ていてやる」

「ありがとうございます」


2人が微笑みあったその時、昼を告げる鐘が鳴った。

クラリスに残された時間は、あと3時間。



「きみは本当に、天才だな」


しばらくの練習の後、陛下のもとへ茶を届ける時間となった。

陛下が待つ王太后の応接室へ向かう途中、ブランがクラリスにそう言った。


「たったあれだけの練習で、ここまでうまく淹れることができるのか」

「ブラン殿の教え方が良かったのですよ」

紅茶を乗せている台車には、その他にも料理長のビスケットがちょこんと乗っかっている。

「いや、しかしだな」

ブランの話を聞き流しているうちにあっという間に応接室にたどり着く。

応接室の前に立っている衛兵に軽く挨拶をし、中に入る。


「失礼いたします。茶をお持ちいたしました」


部屋の中から「どうぞ」と王太后の声が聞こえてきて、クラリスは一つ呼吸を置くとドアノブに手をかけた。

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