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愛され過ぎててわからなかった。

ずっと過去に縛られたのは
ハナエに奪われた時、
アタシはものすごく後悔したからだ。

大事なものは人に二度と渡したくないと。

そしてそんなタクミに執着し続けた結果だった。

ハナエを裏切ってタクミに抱かれたとき、
アタシはどこかで優越感みたいなモノを感じていた。

ハナエではなくアタシを愛してくれる優越感。

アタシはそんな事をずっと愛だと信じてた。

だけど愛なんて言葉で語れるほどアタシの想いは純粋じゃない。

レオはいつでもアタシを支え、
どんな時も守って来てくれた。

喧嘩も浮気もしたけど…
アタシたちはそれを全て乗り越えて来た。

死を目の前にするとレオが与え続けてくれたのが本当の愛だと思えた。

レオと離れたらきっとあの頃ハナエとタクミを逢わせた頃よりもっと後悔する。

「レオ…ゴメン。

こんな身体になってから言う事じゃないけど…

アタシにはレオが必要なの。

タクミじゃなくてレオなの。」

「キョウ…無理しなくていいんだ。

病院のことなら心配しなくていい。

今まで通り、キョウのために最善の努力はする。

でもキョウにはそんな俺に遠慮して自分の気持ちを諦めて欲しくない。」

「病気のためとかそんなこと言ってるんじゃないの。

アタシのそばにずっと居てくれたのはレオじゃない。

アタシはレオが居ないと耐えられない。

愛してるのはレオなの。

それに気付くまであまりに時間がかかっちゃった。

レオは信じてくれないかもしれないけど…

アタシにはレオしかいない。

タクミじゃないの。レオと一緒にいたい。」

そう言ってもレオはきっと信じてくれないだろう。

アタシはこれまでずっとレオにそんな態度で接して来たから。
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