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いつもの優しくて冷静なレオはそこに居なかった。

頭が良くて、大人で思いやりがあって
容姿だってタクミに負けてない。

医者という立派な肩書きがあって
世の中の人が見たら
レオはアタシにとって贅沢すぎるほど完璧だ。

レオはアタシなんかのどこが良くて
結婚したんだろう？

そんなことをレオを見ながら考えてた。

レオはジッとタクミを睨んで

「なんでキョウに拘るんだ？

お前は高校の時から、
キョウの気持ちを知ってたくせに
友達のハナエと目の前で仲良くしたり
キョウを振り回して傷つけてばっかりだった。

キョウもキョウだよ。

どうしてオレじゃダメなんだ？

タクミの事を諦めたから俺と一緒になったんだろ？

結婚なんてそんなに軽いものだと思ってた？

他の男ならまだしも…タクミなんて絶対に許さない。」

タクミは何も言えずに黙っていた。

レオを欺いてずっと裏切っていたアタシたちは
あまりに情けなくて言い返すこともできなかった。

でもレオのためにも今の生活を続けて居たらいけないと思った。

「レオ…別れるのはタクミと一緒になるためだけじゃない。

レオにとってもそれがいいと思ったの。」

「そんなのキョウの勝手だろ？

俺はずっとキョウと居たい。」

タクミは結局何も言わずに帰った。

タクミにとってもレオは大事な友達だった。

「レオ、帰ろう。」

アタシとレオを見かねてカレンさんがやってきた。

「レオ、もう諦めたら？

キョウの気持ちはもう冷めてる。

このまま抜け殻のキョウと居たって幸せになれるとは思えない。

アンタが引くべきだと思う。」

「アイツと一緒になったって幸せになんかなれない。

アイツはキョウの事なんか思ってない。」

レオの言う通りかもしれない。

タクミが本当にアタシを思ってたら
アタシたちは今頃こんな風にはなってなかった。