エリート医師のイジワルな溺甘療法


私のことを嫌いになったわけじゃないとも言った。

ただ、同じ会社の子のほうが好きになってしまったと。

暫くは泣き暮らしていて、思っていたよりもずっと彼のことが好きだったことを、自覚したっけ。


それ以来、誰とも縁がなくて、ずっと彼氏ナシでいる。

いっそのこと安西先生が彼だったら、どんなにいいだろうか。

そうしたら、いちいち病院に行かなくても、リハビリも治療も先生の自宅で毎日、あの素敵な声と大きな手で甘くやさしく……なんて。


「やだやだ、それって贅沢過ぎる! 打算的だし、なにより有り得ない!」


自分で想像しておきながら、思いっきり否定してしまう。

先生と私なんて、身分違いもいいところだ。

たいていのお医者様は、看護師さんとか女医さんとかと職場結婚するんだろうし、病院同士とか医薬品会社の社長令嬢とかと政略結婚をするんだ。

安西先生なんて引く手あまただろうし、そもそも相手にされそうもない。

私ももう二十七歳だもの。次の恋は、結婚を考えられる人としたい。

そう、今の私にとっては、安西先生はアイドルみたいな感じなのだ。

見るだけで幸せになれる、そんな存在。

憧れは、憧れだけにとどめておくのが一番いい。



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