エリート医師のイジワルな溺甘療法
ああでも、ここで負けていたらダメだ。私も攻める女に生まれ変わらないと。
過去の恋のように、ある日突然ほかの女にさらわれてしまう。
先生の周りには、同僚にも患者にもいい女がごろごろいるんだから。
「さ、魚!」
「ん? 急になんだ? 君の思考回路は不思議だな」
クスッと笑われてしまって自分でも恥ずかしくなるが、咄嗟に出た言葉がこれだったから仕方がない。
「せ、先生は、魚は好きですか?」
「好きだよ。もしかして、肉じゃがに続いて、今夜もなにか作ってくれるのか? でも言っとくけど、ひとりで買い物するのは禁止だぞ」
私を包む腕に力が入って、「心配だ」と切なそうに言うから胸がきゅんと痛む。
腰砕けの声と相俟って、身体中が熱を持ってどうにかなりそうだ。
それでも、へろへろになりながらも、なんとか声を絞りだしてみる。
「ひとりじゃ、行きませんから。友達と行きますから、心配しないで」
「約束だぞ? 破ったら、“おしおき”するからな」
「え?」
おしおき?? 言い方は甘くてやさしいけれど、低音のささやき声だと脅し以外の何物にも聞こえない。