エリート医師のイジワルな溺甘療法
この人は、仕事中なのになにを言っているのか。
それにこんなところを誰かに見られたら、先生は困らないの?
患者に手を出してるって、立場的にヤバイんじゃ……?
「わっ、分かりましたからっ。先生はもうお仕事してくださいっ。私のカルテ書いてください」
そうしてくれないと支払いできなくて、永遠に帰れませんから!
体を包んでいる腕をぐいぐい押すとパッと離れたので、その隙に診察室から出た。
メロメロになった体を支える松葉杖があってよかった。
それに、中待合室に誰もいなくてよかった。
真っ赤な顔で松葉杖に寄りかかって深くため息をつく私は、明らかに挙動不審で、あらぬ誤解をされたかもしれない。
先生は誰にも見られない状況だから、あんなふうに抱きしめてきたんだ。ズルイ人。
「とにかく、落ち着かなきゃ」
赤くなった顔を気合で冷まし、受付で支払いを済ませると時計の針は一時半を回っていた。
今日のお昼はここのカフェで済ませることにし、エレベーターへ向かう。
病院の二階には、カフェと床屋さんと売店があるのだ。