エリート医師のイジワルな溺甘療法
「私、ちょっと過剰反応だったかな。おとなしい犬だったのかも」
ホッとすれども、飼い主さんの気分を害してしまったようで、悪いことをした気になる。
脚が健康でないと、普段はなんでもないことが異常に怖くなるのだ。
「麻友、遅いな。私のいる場所分かるかな?」
今日はいろいろ待たされる日のようだ。
携帯を取り出して連絡を取ろうとしていると、麻友が走ってくるのが見えた。
「ごめーん穂乃花。引っ越しの準備していたら、出るの遅くなっちゃった。だいぶ待った?」
「ううん。引っ越しの準備って、ふたりで住むマンション決まったんだ?」
「うん、なんとかね。立地と家賃と間取り、全部をクリアできる物件ってなかなかなくてさ。彼と一緒にさんざん迷って、結局立地条件に妥協して決めちゃった」
選んだマンションのことを話してくれる麻友はうれしそうで、指の先から髪の毛一本に至るまで幸せオーラに満ちて輝いている。
「そっか。いいなあ」
ふたりで暮らすなら、きっとどんなところでも幸せなんだろうな。
「私の話は、おしまい。で、穂乃花はどうなの? こんなところに呼び出して、超絶極上先生と進展があったの?」
「あ、実は……昨日、キス、されちゃった」
「ええええっ!!?」
麻友の嬉々とした叫び声が木立に吸い込まれ、鳥がバタバタと飛び立った。