エリート医師のイジワルな溺甘療法


キスされて、先生の気持ちは私にあるのかなと思うけれど、亡くなった彼女の影が頭の中で浮かんでは消える。

結婚したいと思うほどに愛していたんだもの。きっとまだ忘れられてないよね。

麻友は好きな気持ちも不安な気持ちも、全部言葉で伝えることが大事だと言っていた。私もそう思うけれど、勇気がでない。

不安な気持ちをぶつけたらウザイって思われないかな。

先生は私よりもずっと大人だから平気?


携帯を持ったままため息をついていると、キッチンタイマーのアラーム音が鳴り響いて、びくっと体が跳ねた。


「うわわっ、びっくり。そうだ、煮魚見なくちゃ!」


わたわたとアラームを止めて、湯気の熱さに辟易しながら落し蓋代わりのアルミホイルを退けた。

形が崩れることもなく、いい感じに煮えている。

あとは煮汁を魚にかけながら、もうひと煮たちさせれば出来上がりだ。

スプーンを手にし、汁をすくっては、たらりと魚にかける。


「う~ん、おいしそう。これなら、先生も満足かな? 私もやればできる女だわ」

「ん、そうだな。いい感じじゃないか? さすがだ」

「は……へ? うわあっ」


背後から声がしたので振り向くと、先生が私に覆いかぶさるようにして、鍋を覗き込んでいた。


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