エリート医師のイジワルな溺甘療法


先生は無意識にやっているんだろうけど、私の心臓は働き過ぎて壊れてしまいそうだ。

お腹にある先生の手に、鼓動が伝わっていそう。

私が、先生を好きな気持ちも……。


煮魚はいい具合に煮汁にとろみが出たところで、焜炉の火を消した。


「うまそうだ。帰ってきたタイミングがよかったな。今日は昼を食べ損ねたから腹が減った」

「やっぱりそうだったんですか!? ごめんなさい、まだ茶わん蒸しがあるんです。すぐに用意しますね」


大変大変、急がなくっちゃ。ごちゃごちゃ考えずに帰宅時間を訊いて、出来上がりのタイミングを合わせればよかった。


「今から作るのか。手伝うから待ってろよ。荷物置いてくるから」


先生は少し大きめの長方形の箱を抱えて、キッチンから出て行く。

とは言っても、向かいにあるキッチンカウンターに鍵を、下には箱を置いただけで、すぐに戻ってきた。


「へえ……器を買って来たのか」

「はい。ダメでした? 迷惑なら、持って帰りますけど」


茶わん蒸しをメニューに加えた理由は、ここにもある。

お揃いでかわいい模様の器を持ち込んで、先生の反応をみるという、麻友の小技。

もしも渋い顔をされたら、ちょっと心の狭いオトコか、そんなものを置かれたら困る状態で……恋人にするには、考え直した方がいいよって──。

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