エリート医師のイジワルな溺甘療法
「湯気が熱いだろ。俺が入れるから」
「私の手よりも、先生の手の方が大事ですよ」
患者さんの診察をするのに、先生の手がヤケドをしていたらいろいろ困りそう。
手をどうしたんですか?なんて訊かれて苦笑したり、製薬会社の営業女子がそれをきっかけにして「いい軟膏があるんです~。今度食事をしながら……」ってグイグイ攻めてきたり。
「ダメっ先生。熱いから、私がするんですっ」
「手伝うと言っただろ? 君は心配性だな。これくらい平気だぞ」
何故か先生はムッとした様子で、口調が少しだけ強い。
そんなの、先生の方が私なんかよりも余程過保護なのに……。
むうっと膨れている間に、先生は手際よく鍋の中に入れてしまったので、水滴が落ちるのを防ぐように布巾を被せて蓋をする。
傷や肌荒れのない先生の綺麗な手を見つつ、出来上がりの方が器が熱いから、私はそっちを担当しようと固く決める。
やると言い張っても負けちゃいけない。今度こそ絶対に止めるのだ。
このキッチンにはミトンがない。そういえば鍋敷きも。
道具類はあると思っていたけれど、小物は少ないんだ。
まだまだそろえなくちゃいけないものがたくさん有りそう。
それに、カウンターとキッチンの境に、小さな観葉植物を置いたら素敵。料理にも使える様な、ハーブ系がいいかも。