エリート医師のイジワルな溺甘療法
「ところで、どれくらい時間がある?」
「は?」
「蒸す時間は?」
あ、そうだった。キッチンタイマーセットしなくちゃいけないのだ。レシピの時間は……。
「えっと、十分くらいかな」
「ん、それだけあれば、充分だ。ちょっと来てくれ」
「はい?」
携帯をいじっていると、くるんと体の向きをかえられた。
そのままふわっと体が浮いたので、思わず先生の肩にしがみついたら携帯を落としそうになって、慌てて持ち直した。
なんで子ども抱っこ? 来てくれって、どこに?
焦っている私はすいすい運ばれて、下ろされたのは、ダイニングのキッチンカウンターのそばだった。
クッションの上に座らされて、先生の動向を見守る。
「これを買ってきたんだ」
先生が手にしたのは長方形の箱で、折り畳みテーブルと大きく書かれている。
「これなら、必要なければ仕舞っておけるだろ? 君が揃えてくれるインテリアの邪魔にならない」
そう言いながら箱の中から引っ張り出したのは、シンプルな長方形で木目がナチュラルなもの。
それを組み立てながら、私と一緒に食べる機会が増えて、どうにも不便だと感じて、今日はホームセンターに寄るために早めに仕事を終わらせたと言う。
このお部屋のインテリアを統一させることも大事なことだけれど、こんなふうに、必要なものがゆっくりそろっていくのも素敵なことだなって思う。