エリート医師のイジワルな溺甘療法


怒りを含んでいるのではなくて、ささやくような声音は、ベッドで聞くものと同じ。私は、この鼓膜をくすぐるような、低い声に弱い。

彼の言わんとするところは、ショッピングカートの事件から“ひとりじゃ心配だ”という理由で、食材は宅配サービスを利用するように言われていたこと。

破ったら、“おしおき”すると。


「あ、あれはもう関係ないでしょ? かなり杖なしでも歩けるもの。俊敏とは言えないけれど、避けられるから平気だわ」

「そういう問題じゃない。俺は、許していない。犯人はまだ捕まっていないんだぞ? また君になにかあったら、俺は……」

「あ……」


彼の腕に力がこもって、苦しいくらいに抱きしめられる。

そうだった。窓拭きも買い物も禁じられるのは、彼女を急に失くした過去の経験からのこと。

愛してるからこその過保護で、行動を制限される………私は、彼を癒やすことができるのかな。


「雄介さんは、二度あることは三度あるって言葉知ってますか?」

「もちろんだ。それがなんだ?」

「私はもう三度あぶない目に合ってます。骨折して、自転車にひかれそうになって、カートがぶつかった。だから、きっともうこれ以上悪いことは起きません。あとは、いいことばっかりの人生なんです!」


< 133 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop