エリート医師のイジワルな溺甘療法


頭を打って気絶して、気づいたら病院のベッドにいたのだ。

腕には点滴の針が刺されていて、頭には包帯、脚を動かせば激痛が走った。

自分が置かれている状況に混乱し、泣いている私のそばに来て、安西先生は額に優しく触れながら言った。


『大丈夫。頭の傷も脚も全部、俺が綺麗に治すから、安心しなさい』


微笑んでいたけれど瞳は真摯で、それがとても頼もしく思えて、乱れていた心がすっと落ち着いた。


「いつの間にか、桜も散っちゃった」


病院の中庭にある樹齢三百年といわれる大きな桜の木は、すっかり葉桜になっている。

入社式もお花見も、春のイベントは全部、私のはるか頭上を通り抜けちゃった。

骨折して自宅に引きこもっている間に、私一人だけ世界から取り残されたような気分だ。

こんなふうに思うのも、人と関わることが極端に少ないからかな。

ショップでは、家具とお洒落なインテリア小物を扱っている。

それらのレイアウトを考えたり、お客様と話したり、仕事に行けばたくさんの刺激がある。


「やっぱり、早く仕事に復帰しなくちゃ。このままじゃ、鬱々しちゃう」


葉桜を背にし、駅に向かうべくバス停まで歩くと、脚の運びがこれまでよりもずっと楽になっていることに気がついた。


「え、これって、先生のお陰だよね……?」


やられている時は容赦がなくて、ヒドイ! 止めて! オニ!って思ったけれど、やっぱり痛いくらいに動かした方がいいのかもしれない。

すぐにヘタレていないで、もっとリハビリがんばらなくちゃ。

やっぱり、ヒールをはいて颯爽と歩きたいから。


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