エリート医師のイジワルな溺甘療法
アラサーの地味な女に極上の彼氏ができたと言って、みんなの興奮は最高潮だ。
「それで、ご結婚はいつですか?」
「プロポーズはどこで?」
後輩ふたりが、芸能記者のインタビューのように、携帯をマイクがわりにして訊ねる。
そのキラキラの笑顔から、ワクワク感がひしひしと伝わってきた。
しかし、これ以上付き合っていたら業務に遅刻しかねない。私だって制服に着替えなきゃならないのだ。
よって、きっぱりと宣言することに決めた。
「まだ決まってません! プロポーズもまだです! 以上!!」
精いっぱいの迫力を出してさくっと切り上げ、腕を伸ばして壁を突き破るアピールをすると、しぶしぶ退いてくれる。
「えーっ」
「じゃあなんで一緒に家具買ったのー」
「もっといろいろ詳しく聞きたいのにー」
みんながブーブーと残念がっている中で、ひとりだけ離れた位置にいた先輩が、手をパン!と叩いて窘める声を出した。
「ちょっと、みんな瀬川さんに食いつき過ぎだから。ほら、さっさと仕事の準備をして。今日は展示替えもあるから忙しいでしょ! さっさと持ち場に行く!」
彼女は勤続二十年のベテランで、この中では誰も頭が上がらない存在だ。ほらほら行って!と急き立てられ、みんなはぞろぞろと売り場に向かう。