エリート医師のイジワルな溺甘療法
これは珍しい。無頓着な彼が、インテリアに足りないものがあると思うなんて。
家具がそろってくると、必要なものが思い浮かぶんだろうか。それってすごい進歩じゃないか。
『ちなみに、雄介さんの思う足りないものって、なんですか?』
購入プランにないものなら、是非加えたい。そう思って訊ねたんだけど、返事がこない。
もう休憩が終わっちゃったのかな。
たっぷりの間があって、返事をあきらめかけたとき、チロリンと着信音が鳴った。
『とりあえず、今は秘密。今度言うよ』
『うーん、今すぐ聞きたい! けれど、了解です』
仕方がない。きっと文章じゃ伝えられないものなんだ。物の名前が分からないとか。
無頓着な彼なら、あり得るもの。
肩をすくめつつ携帯を仕舞おうとすると、再びメッセージの着信音が鳴った。
『今からさしあたってすることがないなら、悪いけど、届けてほしいものがあるんだ。病院まで来れるか?』
どうやら忘れ物をしたみたい。彼にしては、珍しいことに思える。
『はい、行けますよ。なにを届けましょうか』
『キッチンカウンターの上にある封筒。それと、君の作ったおにぎりひとつ。具は冷蔵庫にあるもので。なんでもいいよ』
「おにぎりひとつ?? しかも手作りって、ご飯あるのかな」
戸惑いつつも了解した旨を伝えて、キッチンに急いだ。