エリート医師のイジワルな溺甘療法
「次は、藤村整形外科病院前でございます。お降りの方はボタンでお知らせください」
市バスのアナウンスが入り、慌ててボタンを押す。
なにせマンションからバスで二駅しか離れていないのだ。すぐに着いてしまう。
「これで、よかったのかな」
おにぎりはシンプルに梅干し入り。彼の家にかわいい紙袋はなかったので、コンビニのレジ袋だ。この中に頼まれた封筒も入っている。
病院は外来時間が終わっているので、バスから降りる人は私だけ。エントランスに向かう歩道は、人の姿がない。
待ち合わせは中庭にある藤棚のベンチ。
だけど、中庭は四方にある病棟から見れば結構目立つ場所にあるし、散歩している人も多い。
私と会ってるところを、同僚や患者さんに見られても構わないのかな。
彼が噂の的になるのがちょっぴり心配。けれど彼の恋人としてここに来たことがうれしい。
そんな相反する気持ちを抱えながら中庭に回る。
すると車いすを押して散歩している人が一組と、草取りをしている作業者が数人いるだけだった。
これなら、誰にも見られないかも。でも二階のカフェや病棟からは丸見え?と思いきや、藤の枝葉が生い茂っていて、上からは見えない状態のよう。