エリート医師のイジワルな溺甘療法
先生はさらりと言うけれど、すごい高額なんじゃないだろうか。何億とか。
もしかして先生は、大病院を経営する院長のご子息なの!?
実家がミカン農家の私なんか、口も利けないような上流階級の人なんじゃ……。
「あの、先生は、御曹司なんですか? それか、世が世なら城主になれる家柄だったりします?」
おずおずと尋ねると、振り返った先生の顔はきょとんとしていた。
「なんだ、それは。俺は、ただの整形外科医だよ」
「そう、なんですか。ただのお医者さま。こんなタワーマンションの上層に住んでるから、てっきり……そっか、違うんですね」
先生は普通の家の人……身分違いじゃなくて、良かった。
あれ? でも待って。
それなら、先生の年収がセレブなみにスゴイってことで、どっちにしても身分違いなるの?
敏腕整形外科医で、言い寄る女は無限にいて、こんな高級マンションに住んでいる。そこらの半端な御曹司よりすごいかもしれない。
「ん、なんか残念そうだな。君は、御曹司や城主のほうが好みなのか?」
廊下を先導していた先生は、リビングらしきドアの前でぴたっと止まって、私の顔を覗き込んでくる。
「へ?」
先生の目が怖くて、なんだか怒っているみたい。もしかして私、無意識に失礼なことを言ったんだろうか。