エリート医師のイジワルな溺甘療法
「違いますっ。先生との身分差がなくて、ホッとしただけですから!」
「……そのホッとしたとは」
「ああ、あのっ、先生。それよりも、早くお部屋を見せてください!」
先生の言いかけた言葉を強引に遮って急かす。これ以上突っ込まれて訊かれると、いろいろうっかり喋ってしまいそうだ。
すると先生は、白色のドアを開けてくれた。
「わ……ほんとーに、なんにもないんですね……」
「だからあのとき言っただろ。布団しかないって」
ここは角部屋のためか、リビングの窓が二面にある。
そのパノラマのような大きな窓からは、外にも中にも遮るものがないから、空しか見えない。
「リビングは十六畳で、ダイニングの方は八畳くらいかな」
──合わせて二十四畳。2LDKが普通じゃない。
天井も高くて、真っ白のクロスがだだっ広さを強調している。
ダイニングの方を見れば、キッチンカウンター近くの床に、数個の段ボール箱と積み上げられた本が置いてあっった。
キッチンカウンターには、ノートパソコンがある。
でも椅子が、ない。これじゃ、帰宅してもくつろげないのでは。
先生はキッチンカウンターで食べてるって言ってたけど、立って食事をしているの?
本当にここで生活してるんだろうか。というか、こんなに物がないのに、生活できるものなの? どうやって??