エリート医師のイジワルな溺甘療法


先生の一挙手一投足で、体がピクリと反応してしまうのは、警戒してるわけじゃない。

どちらかと言えば、触れてもらうことに期待しているのだ。

どきどきビクビクしてるのを誤魔化すために、ジェスチャーをやたらオーバーにした。


「そっ、そうなんですね! それを枕にすれば、今夜からよく眠れますよ! 安眠間違いなしです!」


やたら声が大きくなって、挙動不審だって自分でも思う。

先生もそう感じたのかクスクス笑っている。自意識過剰になってるって、バレバレだ。

こういうとき“いい女”は、負けないくらいの色気を醸し出して、無言のまま誘うんだろうけれど。

私は、食事に誘うこともできないのに……。


「そうだな。今日はよく眠れそうだが、君が夢に出てきそうだぞ」

「へ? それって、どういう意味ですか」

「反応が、おもしろいからな。頭に残る」


……反応が、おもしろい。

これって、ステーキ屋さんで言われたことと同じだ。

やっぱり先生にからかわれてるのかな。

このままじゃ『いい女だったな』じゃなく、『おもしろい女だったな』の方で記憶に残りそうで不本意だ。


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