エリート医師のイジワルな溺甘療法


「このクッションが、四つあるんだ。どうだ?」


不意に低い声が耳をくすぐって、またまたドキッとする。

先生はスポンジを退けてベッドに手をついて、私に体を寄せていた。その微笑みが、ちょっとイジワルく見える。

なにを考えているんだろう……思わずのけぞった。


「な、なにがですか?」

「布団からベッドにグレードアップしたし、いいクッションもある。寝室は、人間の住処らしくなっているだろ?」

「あ、そう、人間の住処でしたね……リビングよりははるかにマシですけど、ふたつのアイテムだけじゃ、ダメです。寝室にもカーテンがないもの。イマイチじゃなくて、イマサンくらいです」

「うん、なかなか厳しいな……しかし、君は、カーテンに拘るんだな」

「カーテンは大事なんです。外からの視線を遮るだけじゃなくて、日光から家具やクロスを守るんですから、あった方がいいですよ。更に言えば、保温効果もありますから、節電になりますし、調光できますし、人間の生活には必要なものです」


この寝室には、カーテンだけじゃなくて、ラグもあった方がいい。

枕元の壁にはお洒落な絵を飾ったら素敵だ。

あと観葉植物も置いたら癒されそう。

いろいろイメージするだけでわくわくする。

< 55 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop