エリート医師のイジワルな溺甘療法


お部屋のインテリアをコーディネートするのは、こんなに楽しいことなのに、興味がないなんてすごくもったいない。

寝室の天井には埋め込み式のライトがあって、壁には黒のランプシェードの間接照明がある。

カラーコーディネートを考えながらあちこちを見回して、気づけば先生がじっと見つめていた。


「あ、ごめんなさい。なにか話しかけていましたか?」


夢中になってて全然気づかなかった。心底申し訳なく思っていると、先生はふわりと笑った。


「いや、なにも。……それなら、今からカーテンを買いに行こうか」


すっと立ち上がった先生に腕と腰を支えられて、無理なく立ちあがる。松葉杖を拾い上げて渡してくれるまでが、すごく自然だ。

どうしてこんな素敵な人が、インテリアには無頓着なんだろう。

もしかして無頓着というよりも、今まで忙しくてなにも買う暇がなかったから、とか?

私にコーディネートを頼むのは、よりいい生活環境を手にいれたいからで……本当は……。

じゃあ行こうかと言って、先立って寝室を出て行く先生を慌てて引き止める。


「待ってください。まず、窓のサイズを計ってからにしましょう」

「サイズ? 住宅の一間の窓の大きさは、どこも同じようなもんじゃないのか?」


先生は、きょとんとした顔をしている。

とりあえず大きいのを買えば、合うと思っていたらしい。

やっぱり無頓着……というか、自分で買い物をしたことないのかもしれない。

私は、持参したメジャーを先生に渡して、サイズの計り方をレクチャーしたのだった。


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