エリート医師のイジワルな溺甘療法
「じゃあ、あっちに行きましょうか」
とりあえず群青色のカーテンを求めて青系の棚に移動しながら、更にアンケートを重ねる。
「柄の好みはありますか? たとえば、幾何学模様とか、スタイリッシュなストライプとか」
「特にないから、なんでもいいぞ。君の好みでいい」
「え……私の?」
思わず立ち止まって先生を見上げると、なんか問題あるか?としれっと言う。
「もしかしたら、花柄とかハート模様とか、ファンシーなの選んじゃいますよ? いいんですか?」
「いいぞ。君の好みだろう。構わないぞ」
これって、私のことを信用してるからなの? それとも、完全に興味がないだけなんだろうか。人間生活に役に立てばなんでもいい、みたいな。
うーん、もう少し興味を持ってもらえるといいんだけれど、どうしたら……。
「いらっしゃいませ」
横から声をかけられて振り向けば、四十代くらいの女性店員さんの笑顔があった。
「お足が大変そうですので、あちらの席で布のサンプルをご覧になってはいかがでしょう。奥さまの好みのものが簡単に探せますよ」
店員さんはお店の真ん中ほどにある商談スペースを指さした。
テーブルセットが並んでいるそこでは、何組かのカップルが仲良くサンプル帳を見たり、店員さんと話をしたりしている。