エリート医師のイジワルな溺甘療法


それぞれに漂う甘い雰囲気と年齢的な感じからみると、新居のカーテン探しっぽい。

奧さまと呼ばれたということは、私たちも新婚に見えたのかな。あんなふうに、仲良く見えたの?


「え、あの、私は」

「ああ、それはいいですね。サンプルがあるなら、そうさせてもらおうか?」


私の声を遮るように言った先生の声の大きさに驚いてしまう。


「え?」

「その方が、君が楽だろう?」

「……はい。楽です」


自分の顔が赤くなっていくのを感じる。

だって、私のこと奥さまって勘違いされているのに、先生は否定しないのだ。それどころか、今の会話だと奥さまを気遣う優しい旦那さまになっている。

ああ……でも、そうだった。

先生は、誰と噂になっても、否定も肯定もしない人なのだ。今のが、特別なことじゃない。


「こちらへどうぞ。約千種類の中からお選びいただけますよ。色のイメージはお決まりですか?」


店員さんに色を伝えると、三冊の分厚いサンプル帳を渡してもらえた。

それを見た先生がウンザリしているのが分かる。

こんなにあるのか……とつぶやいていて、感心しているのか、呆れているのか。サンプル帳を捲る私を無言で見ていて、全面的にお任せモードに入っている。

まあ、最初からそうなんだけど、そうはさせないのだ。

これを機会に、インテリア選びの醍醐味を、少しは味わってもらわなければ。


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