エリート医師のイジワルな溺甘療法
そんなことを考えているうちに、硬いギプスはまっすぐ綺麗に切れ、クッションとして巻かれている綿が見えた状態になった。
本当に柔らかいものは切れないんだなって、改めて思う。
先生が丁寧なハサミ使いで綿を切って取ると、脚に空気が当たって、なんだかくすぐったいような妙な感じがする。
それに、久々に見た自分の脚は、随分と細くなっていた。
やっぱり使わないと筋肉が落ちて、痩せるものなんだ。
「うん、腫れもほとんどなくて綺麗だな」
満足そうにつぶやいた先生の指が、するっと私の脚を撫でる。
なんだか生まれたての肌に触れられているような、自分の脚ながら今にも壊れてしまいそうな、すごくもろいものに見える。
本当にこの脚で歩いても平気なんだろうか。
ギプスで固定されていたときは、かゆくても掻けないし、お風呂に入るときは濡れないようにビニール袋を巻かなくちゃいけなくて不便だったけれど、衝撃から守られている安心感はあった。
先生は私の脚をそっと下に下すと、デスクの方に椅子をくるりと回して、ボードにあるレントゲン写真を見た。
そこには診察前に撮ったばかりのものと、骨折時に撮ったものが並べられている。
骨折時のものは、足首のところに一か所亀裂があって、素人目に見てもはっきり“ここが折れている”と分かるものだ。
けれど今日のレントゲン写真は、私が見ただけじゃどこが折れているのか判別が難しくなっている。