エリート医師のイジワルな溺甘療法
「へえ、治りが早いね。ほとんどくっついてるけど、無理はいけないな。脚への荷重は五十くらいにしておこうか」
「へ? 五十、ですか?」
「その脚にかけてもいいのは、体重の五十パーセントってこと。このあとリハビリ室に行って、自分で確かめて感覚を覚えてください。そのときに自宅でのリハビリ方法も聞いて。じゃ、また一週間後に診せてください」
「……はい」
一週間後……。
これでおしまいじゃないんだ。
まだ先生と繋がっていられることがうれしくて、自然に笑顔になる。
また会えると思えば、完治までの辛い道のりもがんばれるというもの。
医者と患者では恋に発展する可能性なんて、限りなくゼロパーセントに近いけれど、先生に憧れちゃいけないわけじゃない。
「失礼します」
椅子から立ち上がると、ギプスのない脚に慣れてなくて、バランス感覚がつかめない。
こんなに自分の脚が頼りないなんて、骨折なんかするもんじゃないとつくづく思う。
早く杖で体を支えなきゃ。そんな焦りを感じて、片足飛びをして壁の方を向き、そろそろと立てかけてある松葉杖に手を伸ばした。
するとバランスをくずしてしまって、わたわたと手を振り回す。
「やっ、わっ」
けれど、どうにも壁に手が届かない。
おまけに支えられるものがなにもない。
どうしよう、このままじゃ骨折してる脚が──!
転ぶ、と覚悟して目をつぶった瞬間、ぽすんと、なにかで体が支えられた。