エリート医師のイジワルな溺甘療法
藤村先生の診察は簡単なものだった。
脚を少し触って「ふむ」とつぶやいて、生活においての脚の様子を幾つか訊かれて終わった。
さらっとしてて、なんだか終始手ごたえのない診察で、なんのために来たのか分からない。
ほかの先生だと、みんなこんな感じなのかな。やっぱり安西先生がいい。
今日でおしまいかと思われた診察だけれど、藤村先生はなんとも言っていなかったので、精算のあと次回の予約を入れて外に出た。
次回の先生とのお買い物はいつになるかな。
お医者さまは忙しいから、かなり先になるかもしれない。
あんまり日を空けると、先生が飽きちゃって「止める」って言いだしたりして。
カーテンのサンプルを見るのだって、すぐに飽きちゃったんだから。
先生の顔を思い浮かべながらゆっくりバス停に向かっていると、後ろから走ってくるような足音がしてきた。
なんだかとっても急いでるようで、私はなるべく端によった。
歩くのを止めて、背後から来る人をやり過ごしたつもりだったけれど、走ってきた人は私の隣で止まった。
「えっ?」
「ああよかった。捕まえられたな」
「先生!?」
先生は白衣じゃなく緑色の上下を着ていて、お腹の辺りに血らしき黒いシミがある。手術着、みたいだ。
「救急って聞きましたけど……」