エリート医師のイジワルな溺甘療法


藤村先生の診察は簡単なものだった。

脚を少し触って「ふむ」とつぶやいて、生活においての脚の様子を幾つか訊かれて終わった。

さらっとしてて、なんだか終始手ごたえのない診察で、なんのために来たのか分からない。

ほかの先生だと、みんなこんな感じなのかな。やっぱり安西先生がいい。

今日でおしまいかと思われた診察だけれど、藤村先生はなんとも言っていなかったので、精算のあと次回の予約を入れて外に出た。

次回の先生とのお買い物はいつになるかな。

お医者さまは忙しいから、かなり先になるかもしれない。

あんまり日を空けると、先生が飽きちゃって「止める」って言いだしたりして。

カーテンのサンプルを見るのだって、すぐに飽きちゃったんだから。

先生の顔を思い浮かべながらゆっくりバス停に向かっていると、後ろから走ってくるような足音がしてきた。

なんだかとっても急いでるようで、私はなるべく端によった。

歩くのを止めて、背後から来る人をやり過ごしたつもりだったけれど、走ってきた人は私の隣で止まった。


「えっ?」

「ああよかった。捕まえられたな」

「先生!?」


先生は白衣じゃなく緑色の上下を着ていて、お腹の辺りに血らしき黒いシミがある。手術着、みたいだ。


「救急って聞きましたけど……」


< 65 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop