エリート医師のイジワルな溺甘療法
もしも私が彼女なら、毎日「おかえりなさい」って出迎えるのに。
「早く家具をそろえてあげなくちゃ」
私が先生のためにできることは、それだけなんだから。
窓辺に寄ってみると、眼下には町の明かりが星のように広がっている。空の星の瞬きは弱いけれど、地上の星は綺麗。
ソファは、夜景を楽しめるように置いたら素敵だ。
リビングの照明類は全部間接だから、本を読むときのためにフロアスタンドがあった方がいいかな。
寝室のカーテンは結局焦げ茶色にしちゃったから、リビングは先生の好きな群青色をメインにして考えよう。先生の疲れや寂しさが少しでも和らぐように。
「先生は何時頃帰ってくるかな」
時間潰しにインテリア雑誌を読むには、照明が暗すぎる。
少し手持ち無沙汰を感じ始めていると、廊下の方から物音が聞こえてきてた。
先生が帰ってきた。
そう思えば急に緊張感に襲われて、胸がどきどきし始めた。
窓にリビングのドアが開くのが映り、振り返ると、ドアの向こうから白シャツに鈍色のジャケット姿の先生が現れた。
「先生、おかえりなさい。あの、おじゃましてます」
「ああ……ただいま」
先生はキッチンカウンターのうえに鍵と鞄を置いて、私の方へ足早に近づいてくる。
そして、あろうことか、私は、ふわりと抱き寄せられた。