エリート医師のイジワルな溺甘療法
「ひどい目にあったけれど。至れり尽くせりだったな……犯人が早く捕まるといいな」
パトカーの赤色灯が遠ざかって行くのを眺めたあと、先生のお部屋に向かう。
事件のせいですっかり遅くなっちゃったけれど、肉じゃがを作る時間あるかな。
脚はまだ少し痛いけれど、お料理くらいはできる。
お部屋の前でショルダーバッグの中から鍵を取りだそうとしてると、いきなり携帯の着信音が鳴りだした。
「わっ、びっくり……って、え、先生??」
もしかして今日はリハビリなしって連絡かな?
わたわたと携帯の操作をして出ると、低音ボイスが耳に響いた。
『君、今どこにいる?』
「あ、ちょうど先生のお部屋の前にいます」
『俺の部屋の前? 本当か?』
「はい、今から入ろうとしているところで、先生から電話がかかってきて……」
『ん、そうか。ちょっと後ろに避けてろよ』
「はい? 避ける?」
小さな疑問符が頭の中で踊った瞬間、目の前のドアがゆっくり開いた。
黒いドアの向こうから携帯を耳にあてた先生が登場して、私を確認すると微笑みながら携帯を耳から離した。
「帰ったら君がいないから、心配したぞ」
心底ほっとしたような声を出した先生は、すぐに買い物袋に目を留めて、自然に私の手から奪った。