エリート医師のイジワルな溺甘療法
先生はジャケットを着たままで、帰宅したばかりみたい。
私がいないことに気づいて、すぐに電話をかけてくれたんだ。それだけのことなんだけど、うれしい。
「今、そこのスーパーに行っていたのか? ひとりで?」
先生がドアをいっぱいに開けて支えてくれてるので、精いっぱい急いで中に入る。
スーパーでの事件のことは、リビングに入って落ち着いてから話せばいいかな。
「はい、肉じゃがを作ろうと思ったんです」
「……肉じゃが?」
「そうです。家庭料理定番の肉じゃが。先生が帰ってこないうちに、内緒で作ってびっくりさせる計画だったんです。だけど、今日に限って、お帰りが早いんですね」
いつも九時以降に帰って来るのに……内緒の計画が台無しになってしまった。
でもこれは先生のせいじゃない。全部、あのおバカな犯人のせいだ。
すんなり買い物できなくて遅くなったのも、脚が痛いのも、先生を心配させてしまったのも!
犯人が捕まったら、ひと言文句を言わないと気が済まない。
「うん、早く帰って来たのに、まさか君に文句を言われるとは。心外だな。まあ、早いと言っても八時半は過ぎてるか」
ムカムカむっつりした気分がつい声に出てしまっていたようで、先生が困ったように苦笑している。