エリート医師のイジワルな溺甘療法


「ごめんなさいっ。怒ってるのは、先生のせいじゃないんですっ」


違うんです!の気持ちを瞳と語気に込めて見上げると、先生は一瞬固まった後クスッと笑った。


「分かった、分かった。とりあえず、部屋に行くぞ」


宥めるように言われたので、横綱が五人は入れる広い玄関内を移動して、いつも通りシューズボックスに体を預けて松葉杖を逆さにする。

杖に赤いキャップを被せていると、先生がさりげなく腰を支えてくれた。


「……脚、どうかしたのか?」

「え?」


キャップを被せ終わって見上げると、先生の表情が少し険しくなっていた。

病院でよく見た医者の真剣な目が、私をじっと見つめている。


「いつもと違う」

「分かるんですか」

「俺は、伊達に君のことを見ているわけじゃないぞ」


いつもと同じように歩いていたつもりだったのに。

ほんの数歩歩いたのを見ただけで、先生は異常があると見破っている。

あまり自覚はないけれど、相当に脚の具合が悪いのか。せっかく治ってきていたのに、逆戻り……?

悔しくて哀しくて、涙がじわっと浮かんで、先生の顔が霞んでしまう。


「ど、どうしよう。そんなの嫌」

「落ち着け、俺がついてる。頼むから泣くな」


すっぽりと腕の中に入れられて、先生の大きな手が私の後頭部をなでてくれている。逞しい胸に顔をうずめると、私を抱く腕に力がこもった。


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