エリート医師のイジワルな溺甘療法
とりあえず先生の見立てはOKだけど、明日念のためにレントゲンを撮ることになった。
怪我の具合が分かって落ち着いたので、さっきのスーパーの事件を事細かく先生に話す。
すると、先生の目がどんどん据わっていった。無言だけれど、怒りの気がひしひしと伝わってくる。
「そいつ、許せないな」
ぼそっとつぶやいた声が、地の底から響いたように恐ろしく聞こえる。心なしか、空気もひんやりしたような……背筋がぞわっと震えた。
先生が怒ると、こんなに怖いんだ。
「もしひびが入ってたら、俺が警察に連れて行くよ」
「ええっ、いいです。警察にはひとりで行けます。先生はお仕事みっちりあるんですから、ダメですよ」
「いや、行きたいんだ。君の、一大事なんだから」
先生の手が私の頬に触れて、涙の痕をそっと拭った。
ついさっきまで据わっていた目は、その影もなくて、すごくやさしい。
「放っておけないんだ」
切なげに言う先生の声は、いつもより甘く感じる。
先生の手は私の頬にふれたまま。魅入られたように動けなくて、振り払うことができない。
このままだと先生の繰り出す甘い糸に、深く絡め取られてしまう。
「あ……先生は、なんというか、その、わりと過保護なんですね。私、大人なんですから、大丈夫ですよ」
努めて明るい声を出すと、先生は私の頬から手を離した。