エリート医師のイジワルな溺甘療法
「過保護か。そうかもしれないな」
少し自嘲気味に言って、先生は天井を仰いだ。
「先生?」
「それは、昔、好きな女を守ってやることができなかったせいかな」
「え、守れなかったって、どういうことですか?」
問いかけた私を見た先生の表情は、微笑んでいるけれど、哀しそうに見える。昔、なにがあったんだろう。
「君に、俺の過去を少し話してもいいか? つまらない話なんだけど、聞いてくれるか?」
「はい。是非聞かせてください」
「もう四年ほど前のことなんだが。俺には、結婚を考えていた恋人がいたんだ。頭がよくて、気立てもよくて、同僚にも人気のある子だった」
「先生が好きになった人……きっと、綺麗な人だったんでしょうね」
「……そうだな、綺麗だった。彼女は看護師をしていたから、結婚したら開業医になるつもりで、俺は資金を貯めるためにがむしゃらに働いていた。彼女も、勤務を増やして努力してくれた。それが、互いのためになると信じて」
「そうじゃ、なかったんですか? 彼女は、まさか……」
先生は大きくうなずいている。私の想像が正しければ、彼女はもう……。
「俺がほかの病院に出張している間に、彼女は事故にあったんだ。夜遅く家に帰る途中、暴走した車にはねられたそうだ。俺が駆け付けた時にはもう息を引き取っていたよ」